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空き家問題における自治体の対策と国の動き

2017.07.26

行政が行う空き家対策 

ここ数十年、住宅価格は下落の一途で、地方の不動産価格も上昇することはなく、流通量そのものも減少傾向にあります。追い打ちをかけるように、少子高齢化の波が押し寄せています。都市部への人口の集中という問題も、空き家問題に拍車をかけています。

こうした現状を打破すべく、国は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空き家対策法」と表記)を制定し、2015年5月26日に施行しました。「空き家対策法」が施行された目的として、「空き家の持ち主に危機感を持ってもらい、しかるべき対策を講じるよう促す」ということがあります。

では、具体的にどのようなことが行政によって行われるのでしょうか。

いきなり空き家を強制的に撤去するのではありません。まずは、行政区域内の空き家を把握するところから始まります。

そして、「空き家対策法」に基づいて、空き家が自治体から「特定空き家」に指定されて初めて措置が講じられます。

自治体からの修繕や解体の勧告、命令があれば従わなくてはなりません。これに応じなければ勧告、命令と段階を踏んで、ついには強制執行の対象となります。すぐに倒壊の恐れのない空き家では強制撤去ではなく改善で済むこともありますが、費用は所有者負担となります。

また、とりわけ注目を集めることになったのは固定資産税が高くなる点です。特定空き家に指定されてしまうと、土地の固定資産税が最大6倍までに跳ね上がってしまいます。

さらに、いったん指定されてしまうと固定資産税は上がったまま。土地を更地にしても駐車場などに転用しても、住宅用地への減税措置がなくなったために高い固定資産税を払い続けなければなりません。不動産を処分しない限り半永久的に出費が伴うこととなります。

将来的に空き家となりそうな家があるのならば、今のうちから賃貸や売却を視野に入れて対策を講じておくのが良いでしょう。

「空き家対策法」によって離れた親族にも義務が発生するようになりました。空き家があるほかの市町村に居住しているために、これまで探せなかった人に対しても戸籍や住民票から特定することができるようになったのです。

「空き家対策法」の施行以前は請求できなかった法定相続人に対しても、課税し修繕や維持管理の義務を課せるようになっています。

国の空き家対策の方向性 

現状でも空き家問題は喫緊の課題ですが、近い将来にはさらなる対策が求められます。

人口減少はすでに始まっていますが、数年でピークを迎え、じわじわと世帯数は減少していくと予想されています。高齢の親が加齢のため介護施設などに入居すれば、同居していない場合は実家は空き家となります。このように、世帯が減っていっても空き家だけが残されるケースが増えてくるでしょう。

家を売りたくても、古くて郊外にある物件は人気がありません。築年数が浅く利便性のいい場所にある物件が求められるため売れ残ってしまいます。解体費用も負担となります。更地にしても活用できる目途がつけばよいのですが、そうでもなければ高い費用をかけてまで解体しようとも思えないのは仕方がない話です。固定資産税も更地では高くなることも、解体が進まない要因の一つでした。

空き家は多方面で悪影響を及ぼし、放っておけばこの先増えていくばかりです。国としてもついに動き出しました。「空き家対策法」が施行され、特定空き家の指定が始まりました。これに法的な根拠ができ地方自治体が具体的に動けるようになったのです。現状では基本方針が定められているのみで、具体的な施策までは定められていません。所有者が不明の場合の対応などの扱いなどにも検討の余地が残されています。

今後、さらに地方自治体の空き家対策を後押しするような方向に動いていくことが予想されます。

空き家問題を行政に依存することの懸念点、課題

空き家撤去と空き家活用促進についての対策が進められるのは間違いありません。その際懸念されるのは、特定空き家に指定される基準が各自治体の裁量に任されているということです。保安上危険で、衛生的に有害で、景観を損なう。判断基準はこのように漠然としたものです。確固たる基準がないままに、自治体それぞれの裁量で重要な事項が決定してしまうということは不安も残ります。

基本的に空き家は、所有者自身が撤去することが求められます。ですが、老朽化がひどく所有者が自主的に解体しない場合に、行政がどの程度費用をかけていくのか、費用は回収できるのかなど課題も残ります。

空き家活用においても、今後コンパクトシティ化が推し進められていけば、すべての物件を活用することは物理的に難しいでしょう。都心部以外にある空き家をどうするか、検討すべき課題は残されています。

 

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