遺品整理 一生分のトイレットペーパーに見た祖母の優しさ

こんにちは、こころテラスです。このコラムでは全国の方からいただいた遺品整理・生前整理の体験談をご紹介しています。(弊社にご依頼いただいた案件ではありません)今回は、戦前生まれで物持ちの良かったお祖母様の遺品整理のエピソードをいただきました。

整理整頓は得意でも物が捨てられなかった祖母

98歳で他界した祖母の家。現在、独り身である叔父が住んでいます。戦前生まれの祖母は、整理整頓は得意でしたが、いらないものを捨てる習慣がありませんでした。
例えば、人からいただいたものは使わない物でも箱のまま大事に保管をし、トイレットペーパー、ティッシュなども多めに買ってはストックしていました。
そして、孫の私が行くと、新品同様のお財布や小物類を、一つ、二つとくれるのです。子どもの時だったので、「時代遅れでいらないな」と感じるものもありました。それでも大好きな祖母がくれたのだと考えると、なぜかしばらくの間私の宝物になりました。

物が多くても整理整頓は得意な祖母でしたが、晩年はやはり物忘れが激しくなりました。どこへしまったかわからなくなったことで、家族内のトラブルを招くこともありました。

家とともに大量のものも引き継いだ叔父

今から数年前、そんな祖母が他界しました。そして、その家に定年退職した叔父が住むようになりました。叔父が暮らし始めてからも、収納にぎっちり詰め込まれた祖母の荷物はそのままでした。
叔父は独身で持ち物がそれほど多くなかったので、それでも問題なく暮らせたようです。

叔父と一念発起 専門業者を呼んで遺品整理

その家もさすがに築年数が経ち、とうとうリフォームが必要なときがきました。あるとき、叔父から電話があり「おばあちゃんの遺品整理を手伝ってくれないか」と声がかかりました。
私は遠方に住んでいますが、電車を乗り継いで手伝いに行くことにしました。叔父と二人だけで運び出すには物が多すぎるため、業者の方にも来ていただくことになりました。

業者の方が来る前に、叔父と二人で押入れや物入れなどの中身を取り出すと、予想以上の膨大な量でした。
新品の衣類から、トイレットペーパー、ティッシュまで。それらはしっかりと風呂敷に包まれていたり、箱のまま紐でくくられていたりと、祖母の懐かしい整理癖を残したまま出てきました。叔父は「一生トイレットペーパーを買わずにすむ」とトイレットペーパーの山を見ながらつぶやいていました。
これが整理整頓が苦手な人の遺品整理だったらと考えると、おそろしくなります。

「あれこれとっておいたら、きりがないぞ。できるだけ捨てよう」という叔父の一言で、私は数枚の写真と、新品のパジャマを一着だけ持って帰ることにしました。あとは新品の下着を祖母のお友達に譲ることにして、それ以外は全部業者の方に引き取ってもらいました。
処分品の中には懐かしい手紙や思い出の貝殻、私が学生の頃に祖母にプレゼントしたオルゴールもありました。私があげたものをずっと手元に置いていてくれたことを思うと、遺品整理に来てよかったとあらためて思いました。

遺品は処分しても思い出は残る

祖母は自分が入院したときのこと、誰かにものをあげるときのこと…いろいろなシチュエーションを考えながら物をしまっていたのだろうなあと、遺品整理をしながら何度も感じました。老いても自立して暮らせるよう日用品を揃え、人からいただいたものを大切にあつかい、そして必要な人にはきれいな状態で譲れるようにという祖母の優しさに触れることができました。
祖母の遺したものの多くは業者の方に処分してもらいましたが、叔父にも私にもしっかりと祖母との思い出の日々は残っている、そんな気がしてなりません。

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