相続放棄したい場合の遺品整理の注意点

家族が亡くなると、故人が所持していた財産をどうするかが問題になります。現金、不動産、証券など資産価値のあるものに関して、遺言状の記載に準じますが、特に無ければ法律で決められている割合で配分されます。

ところが、相続されるものは、プラスのものばかりではありません。

遺産相続といえば、相続税がかかることくらいしか思い浮かばないかもしれませんが、故人に借金がある場合、借金もまた相続の対象になります。ローンの支払いをはじめ、故人が負っている借金を相続することになりますので、事前に故人が残した財産と借金の詳細を把握していないと、相続することになってから多額の負債を抱え込むハメになってしまいます。

もし、財産より借金の方が多いと分かったなら、相続することが決まってから家庭裁判所に相続放棄の申し立てをすることもできます。ただし、その間にいくつかの注意すべきことがあります。今回は、遺品整理の際に不本意な不利益を被らないための方法をご紹介します。

相続はどんなケースで放棄される?

もらえるものがあるのなら、いくらでももらいたいと思うのが人情ですが、こと遺産相続となると、様々な問題がからんでくるので、単純には喜べません。法定相続人の間での財産分与や、相続手続きの煩雑さもあります。相続人が多く、さほどの分与も見込まれない場合は「面倒なので」という理由で、放棄してしまうケースがあります。

また、離婚で長らく縁のなかった親が亡くなった場合や、法定相続の順位が低いにも関わらず、上位の相続人がいなかったり、相続放棄があったりした場合に、思いがけず遺産相続人になることがあります。故人との縁が薄いからとか、感情的に受け入れられないなどの理由で、財産の多少に関わらず相続放棄を希望するケースもあります。

相続人の数が少なく、ある程度の財産が残されている場合は、故人の財産の詳細を調査するとともに、借金に関しても徹底して調べる必要があります。
故人が存命の時は、漠然と、土地や建物を所有しているから遺産相続するものだと思っていたら、ふたを開けてみれば不動産の権利所有が債権者になっており、借金の方が多かったなどということもあります。

遺産相続は、本来、残された身内が生きていくのに困らないためのものです。金銭的に余裕があって、身内の責任で負債を引き受けられるであれば、それに越したことはありませんが、そうではない場合は、相続放棄もいたしかたなく、むしろ身を守るために行使すべきでしょう。

相続放棄は、自分に遺産相続の権利があることを知った翌日から3カ月の間に家庭裁判所に必要書類を提出しなければいけません。1日でも過ぎれば相続放棄は認められず、何もしなければ、自動的に相続の意志があると判断されます。なお、相続放棄が認められれば、その後に多額の遺産が見つかっても、相続の権利はありません。

遺品を整理したことによって相続放棄できなくなる注意点

諸事情で相続放棄を決めた場合、遺品整理をするときは注意が必要です。資産価値のないものの処分は問題ないのですが、中には市場価値のある物が見つかって、まとまったお金になるケースもあります。こうした、価値あるものの売却が発覚した場合、相続放棄は認められません。

いったん相続放棄が認められても、資産価値のあるものを意図的に隠蔽したり、資産以外でも故人の物を売却したりするなどの行為が発覚すれば、相続放棄は取り消しになります。借金などの負債は相続したくないけれど、もらえるものはもらいたい、というのは認められません。

ただし、故人の財産を葬儀代の清算に使う必要がある場合は、相続放棄の承認を妨げる理由にはなりません。そのときも、必要最小限でなければ、故人の財産を私用したことになりかねないので、相続放棄を決めている場合は、遺産には一切手をつけずに弁護士などの専門家に相談しましょう。

相続放棄を予定している人が遺品整理をする方法

法律では、「相続財産の一部または全部を処分したとき」は、遺産放棄が認められないとされています。相続放棄をしたいけれど、同時に遺品整理もしなければならないときは、明らかにゴミである物以外の処分は、弁護士などの専門家の指示に従った方がいいでしょう。

故人が借家住まいで一刻も早く退去しなければいけない場合は、とりあえず、すべてのものを別の場所に移してから対処方法を考えましょう。貸し倉庫やトランクルームなどを利用するのも方法のひとつです。多少お金がかかったとしても、故人の負債が多額であればやむを得ないでしょう。

なお、資産価値のないものを形見分けとして受け取ることは問題ないのですが、中には、高額な物をその価値を知らないままに受け取って後々問題になることもあります。

このように、相続放棄を前提にすると、遺品整理はなかなかに困難なものになります。法律の知識が必要となるため、自己判断はやめて、最初から弁護士など法律の専門家に相談してよりよい方法をとる必要があります。

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