年をとり、体力の衰えを感じている方も多いかと思いますが、生前整理を行うということは、思い出の品などを押入れや物置、クローゼットから持ち出し、それぞれを確認していく作業です。
思い出の品の中には重い物があるかもしれませんので、持ち運びには力が必要になる場合もあります。
また、棚など高い場所から荷物を降ろす時には、腕力や脚力が必要で、十分に注意しないと落としてしまい、壊してしまう恐れもあります。
普段の生活を送りながら、生前整理を行うことは思っているより体力が必要です。
また体力的に不安があるけれど、家族や親戚に重労働を任せるのは気がひけるといった考えから、生前整理が進まず、荷物がクローゼットや押入れなどに溢れ返ってしまう恐れもあります。
このようなことから、早い時期から徐々に生前整理すると体力的に楽なメリットがあります。
生前整理は単に不用品を処分するだけではありません。
生前整理では不用品と保管しておく物の分別があり、その際、重要な書類に目を通さなければならない場合もあります。
例えば、土地の権利証などに書かれて細かい文字を読んで理解しなければならない、加入している生命保険の保険証券などについて内容確認をする、といったことです。
また、部屋を大掃除したり、家の外まわりや物置き内の整理といった作業もあります。室内や庭の清掃をするには体力がいりますし、視力が低下してくると床の上に落ちている画びょうなど、掃除の過程で出てくる小物に気づかず、踏んで足をケガしてしまうこともあります。
体調を崩してしまったり病気になったりして、入院することも十分考えられます。
そんな時に頼りになる家族が、身の周りの世話をしようと思っても、保険証などがどこにしまってあるのかわからない場合は探すのに苦労します。
また、普段使う下着や服がある場所についても、ご自分ではわかっているつもりでも、離れて暮らす家族にはわかりにくいものです。
このようなことから、生前整理をすることで普段使っている衣類などをわかりやすく整理して、簡単に取り出せる場所に移動しましょう。
可能であれば、保険証や通帳などの置き場所は紙に書いてリストにしておいて、ご家族に知らせておくのが良いでしょう。
会社勤めや子育てなどで忙しかった頃にはゆっくり時間をかけることができなかった部分の整理も行い、自分に何かあった場合には家族が対応できるようにしておくことが生前整理の重要な要素と言えるでしょう。
ゴミ屋敷といわれる家に住む人がニュースで報道されているのを観ると、近隣の住民が迷惑している様子が伺えます。
ゴミ屋敷に住む人の中には、認知症を発症している方もいるかもしれません。
認知症を発症すると、捨てる物と保管する物を区別する判断能力が低下して片づけられなくなるといいます。
例えば、庭などにたくさんの荷物を雑然と積んだまま放置しておくと、心無い通行人がここはゴミを捨ててもかまわない場所だと勝手に判断して、ゴミを投げ入れるようになり、庭がごみ溜めになってしまい、最悪の場合は放火される恐れもあります。
認知症には、収集癖という症状があるといわれ、ゴミ置き場からゴミを家に持ち帰ってくることがあります。
ゴミ置き場にあるゴミを大切な物として考え、家に持ち帰って庭などに保管してしまうそうです。
放置した物から、虫や異臭が発生することも考えられ、衛生状態が悪くなることがあります。
このような状態になると、離れて暮らすご家族は貴重品の場所などを把握することが難しくなります。
そのため早めに生前整理を行い、大切な物が置いてある場所の情報を共有しておくことが大切です。
年をとると視力が低下して足元の段差や障害物を認識できなかったり、足腰が弱くなってほんのわずかな段差に足をとられ転倒しやすくなるといいます。
実は、交通事故で亡くなる高齢者より、転倒で亡くなる方のほうが多く、年間で7000人を超えるそうです。
床の上に物がたくさん置かれていると、歩行中に足がひっかかって転倒する恐れがあります。
バリアフリーの住宅であっても、荷物が溢れ返っていては意味がありません。
また、冷蔵庫や茶箪笥に賞味期限切れの食品があると、誤って食べてしまい食中毒になる可能性もあります。
物を出したらしまう、不要な物は捨てる、必要以上に買いだめをして冷蔵庫に物を詰め込まないなど、生前整理をする世代だけではなく、どの世代にとっても大切にしたい生活習慣だと思います。