こんにちは、こころテラスです。このコラムでは全国の方からいただいた遺品整理・生前整理の体験談をご紹介しています。今回は、ご家族の遺品整理のエピソードをいただきました。
数年前、私の祖母が亡くなったときの話です。
祖母の住まいを片付けてみて、一番驚いたのが荷物の多さです。二人暮らしにしては大量の荷物があり、片付けはスムーズに進みませんでした。消耗品の買い溜めはもちろん、ハサミなどの日用品も同じものがいくつも見つかりました。出してみると、これだけのものがどこに入っていたのか不思議になるほどでした。
昔使っていた、お箸や箸置き、食器類、私や叔母の着物、本人の着物はじめ、趣味で使っていた扇子、様々なものがタンスや押入れに詰め込まれていました。
塗装が剥がれているお箸や少し欠けている箸置、物は古いですがいまでも使えるものばかりでした。大事に残しておいてくれたことが嬉しく、一緒に片付けていた人たちと昔話がはずみました。
祖母と一緒に選んだ着物もでてきました。柄の好みが分かれて、色々相談したことを思い出しました。
写真もたくさんありました。家族の小さいときのものやおしゃれしているもの、結婚式など。見ていると当時の記憶が蘇りました。
祖母がなくなったのは、突然のことでした。心の準備もできず、しなくてはいけない事が山済みで悲しんでいる暇も正直ありませんでした。葬儀や火葬、片付けなどで忙しく動いているうちに、気がつくと49日が過ぎていました。
悲しみを実感したのはその後でした。ふとした時に手が止まり、思考が止まり、涙が自然と流れていきます。その悲しみを紛らしてくれたのは、思い出が詰まった遺品でした。昔の箸置きや箸を見ると、楽しかった食事の記憶が蘇り、心が暖かくなりました。
遺品を通して疎遠になっていた親族との交流も生まれ、残してくれたものの大きさを実感しました。
それでもこれから先、祖母孝行ができないと思うと悔しいです。まだ、一緒にやりたいことや行きたいところ、話したいこと、たくさんありました。それができないと思うと本当に悲しいです。
遺品はその人が残してくれた思いや言葉の代わりのように思えます。できたら遺品整理ではなく、生きている間に一緒に大掃除をすればよかったと、そのことが一番心残りです。