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家族が残してくれたもの。私が残していきたい遺品。

2017.05.11

こんにちは、こころテラスです。このコラムでは全国の方からいただいた遺品整理・生前整理の体験談をご紹介しています。今回は、お父様の遺品整理のエピソードをいただきました。

父と兄が住んでいた家

実家の片付けに向かったのは、父が癌で逝ってから1ヶ月が経とうとしていた頃でした。
正直、気分は重いものでした。実家には兄と父、男二人が暮らしていて、お世辞にもキレイとは言い難い状況です。足の踏み場がない!とまではいかないものの、こんなところにボールペン、あんなところに飲みかけのコップといろんなものがいろんなところにあって、何とも居心地が悪いのです。おかげで私はお正月でもお盆でも、実家にいけばいつも掃除をしてから帰るのが習慣になっている有様でした。

出てくる、出てくる、物、物…

普段手が及ばなかった物置から片付けはスタートです。母が亡くなって30年、祖母が亡くなってから5年が経とうとしているのに、物置の中の景色はたいして変わっていません。予想を裏切らず、頂き物のタオルや毛布、お鍋、コップやお皿などの食器類。何年かかって使うの?というほどの洗剤、スポンジ、ちょっと包装が変色したサランラップまで。出てくる、出てくる、たくさんの物たちが、ぎっしりと溜め込んでありました。半分あきれながらも、一緒に片付ける叔母との会話は、気がつくとなぜかそう愚痴めいてはいません。「この毛布、あのときの法事のやったね」とか「この食器はおばあちゃんが好きやったね」などと懐かしいあの頃が浮かんでくるものでした。

何もなくなっていた父の部屋

続いて、父が闘病生活を送っていた部屋の片付けに取り掛かります。2年に渡る父の闘病生活の間、私が仕事以外の自分の時間の最も多くを過ごした場所でした。徐々に起きられなくなり、おむつになり、食べられなくなり、どれほど体が辛くても病院よりも自宅がいいと言い、最期を迎え旅立った部屋です。

父を思いつつドアを開けました。すると、何も無いのです。雑然としていた部屋でした。父の衣類やタオル、オムツ、蒲団、生活用品はもちろん、介護ベッドまでがわんさかあったのに。キレイさっぱり、無くなっていました。がらんとした部屋に残っているのは、畳に残ったベッドの跡だけでした。

思い出した、懐かしい笑顔

父の部屋にあった大半の物たちは、兄によって片付けられていました。残りの衣類を片付けながら感じたのは、ホッとした反面、なぜか寂しいような感情でした。そんな思いのなか、最後に洋服箪笥を整理していたとき、商品券を見つけました。お中元やお歳暮などの頂き物や商品券、いつも「持って帰り」と渡してくれた父の顔が浮かびます。にっこり笑う父の顔、久しぶりに思い出しました。

残されたものにとっての遺品整理

取りかかる前は気が重かった遺品整理。でも実際は、肉体的なしんどさよりも、亡くなった家族への懐かしさや楽しかった思い出に浸れる貴重な時間になりました。
肝臓癌を患った父は、最期はガリガリにやせ細り、痛々しくて見るのも辛いほどでした。もっとしてあげれることがあったのでは、と後悔も多々あったのです。
それでも遺品整理をしてみると、なぜか私の気持ちはすっきりしていることを感じました。心に残ったのは、昔の父のがっしりした体格と、にっこり笑う顔でした。

私も人生後半戦にさしかかりました。さて、私は雑多な愛用品とともに、私の家族に何が残せるでしょうか。できることなら笑顔を残したい。今は、そう強く思っています。

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